本焼き包丁の切れ味

2013年 12月 27日

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包丁を手作りしている職人さんの話題はご紹介した事がありますが、今回は鋼のみでの包丁作りです。
しかし硬い鋼のみで柔軟さと硬さを併せ持つ包丁を作る事ができる職人さんがいます。

大阪堺市の鍛冶職人・池田辰男さんは、難しいとされる鋼のみで包丁を作る技術を持っている職人さんです。

刃物は硬ければ切れ味は向上しますが、硬いだけでは刃こぼれを起こしてしまいます。
刃先から峰にかけて適度な柔軟さも硬さも無ければならないのです。
一般に市販されている包丁は、鋼と鉄を合わせて鍛造するそうです。
この構造は「鉄の柔軟さ」+「鋼の硬度」で万能の切れ味を実現する事が可能です。
しかし、使いこんでいくと継ぎ目から弱さが出てきてしまうそうです。

鋼のみでの製作ができれば必要な硬さを確保できるそうです。
ただし、この製法には正確な炎の温度の見極めとスピーディーさが肝心になります。
硬さを出すためには高温で炭素を閉じ込めてしまう必要があります。
高温になるにつれたちまち酸化(錆が出る)が進んで、ボロボロと剥がれ落ちてしまうのです。
焼き入れの際には、鋼に土を置き温度の差を作り硬さの変化を出す事もします。
この土のおかげで、刃物本体から刃先に向かうにつれて硬さに変化を出す事ができます。
日本刀の製造技術と似通ったポイントが多いそうです。

鋼の焼き入れには850℃~850℃の炎の色を見極めなければなりません。
この温度の見極めを失敗すると、焼き入れの際に曲がってしまうのです。
職人さんは5℃単位で炎を見分けられるそうです。
実際800℃の炎の見極めをされている様子をサーモグラフカメラで検証していました。
池田さんが見極めた瞬間の温度は「79.9℃」で0.1℃の違いで炎を読み切っていたわけです。

さすが3代目の鍛冶職人だけあって、熟練の目でなければ全てにおいて見分けはつきません。
この目と手で作られた包丁は、日本刀のような切れ味で料理人の絶大な支持を得ています。