世界最小の手術針で海外市場に挑む [河野製作所]

2014年 1月 10日

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河野製作所は、血管縫合など顕微鏡を用いる微細外科手術(マイクロサージャリー)用縫合針のトップメーカーです。

国内シェアは約60%で、とくに直径70マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下の超微細針のほぼ全量を供給しています。
直径30マイクロメートル、全長0.8ミリメートルの世界最小の医療用縫合針を開発するなど高い技術力を持っています。
従来不可能だった手術を実現して医療の進化に貢献してきました。
2012年からは中国に進出し活躍の場を世界に広げています。

** 世界最小、直径30マイクロメートルの手術針 **

肉眼ではなく、顕微鏡をのぞきながら実施する微細外科手術はご存じでしょう。
指先切断時の血管縫合など、整形外科や心臓血管外科、脳外科、再生医療などさまざまな分野で実例があります。
高齢化が進み、医療費削減が国家的な課題になる中で、患者への負荷が少なく術後回復が早い微細外科手術の需要は拡大に向かうと言われています。

1949年に創業した河野製作所は、もともと時計針などの微細加工部品メーカーだった技術を生かして64年に医療機器製造に進出しました。
0.2ミリメートルの縫合針からスタートして、製造する針の微細化を進めつつ医師のニーズに合わせて関連商品を開発しています。
現在では微細手術用針・糸のほか縫合糸、持針器など「クラウンジュン」ブランドで販売する商品は約1万点にのぼります。
世界最小の30マイクロメートルの縫合針を開発するきっかけは、「500マイクロメートル以下の組織や血管に対応できる外科手術用針糸を作れないか」という帝京大学医学部の黒島永嗣教授からの相談だったのです。

専用の治具や工具などの設備づくりからスタートして、試行錯誤を続けた結果3年をかけて完成にこぎつけた。
現在、国内で70マイクロメートル以下の縫合針を製造できるのは同社だけです。
「大企業が参入しない市場の穴はそこかしこにある」と河野社長は語る。
同社では発売10年以内の製品が売上高の50%を占めています。

品質と製品の安全性を守るために、金属加工から仕上げ、検査、梱包といった工程すべてを社内で実施しています。
微細針の製造は自動化している工程も多いが、重要な工程は人手に頼っているのが実情なのです。
針に糸をつける工程では、V字型に広げておいた針の頭に顕微鏡をのぞき込みながら1本ずつ手作業で糸を置き、包み込んで密着させています。
社員の技能向上に努めるとともに、匠の技の装置化にも取り組んでいるのです。